茗荷(みょうが)の行進

ほん

ずらっと並んだミョウガたち。いろんな形。いろんな大きさ。

音符が並んでる様にも見えるし、ミョウガが背くらべしている様でもあります。これどうしたかといえば、何とシエばあちゃんち、つまりすんちゃんの実家の庭に出てました!え、どこにあったの、このミョウガたち。

私のルッコラ・ミョウガ好きは、もちろんすんちゃんは知ってます。だけど、なんでも喜んで食べるわたしのことです。シエばあちゃんにミョウガまでアピールしたことはありません。だいたいまさか車庫の横のジャングルに、これが生えているなんて思ってもみませんでした。(同じジャングルに例の山ぶどうとウドも存在してるので、食べられる野草をまとめて植えたことがあったのかも)

そこの地所に生まれ育ったすんちゃんだって「知らなかった、ぜんぜん」。嫁いで35年目のらんどくにしても「そこ、うちの土地でしたか?」てな具合です。私はスーパーで3個158円くらいのパックを時々買っては満足していました。

それなのに、先日ばあちゃんが「はい、ミョウガの漬物。食べる?」とタッパーに入れたのをくれたので、ふたつの意味で目玉がびょーんでした。ひとつはもちろん、ここんちの敷地内にミョウガが生えていたこと。もうひとつはばあちゃんが漬物をつくったこと。

青いトマトとミョウガの漬物。さっぱり塩味でおいしい。

レオじいちゃんが施設に入って暮らしていたここ何年か、ばあちゃんは「何にも食べたくなーい」「作りたくなーい」「どこにも行きたくなーい」という無気力な状態が続いていました。もともとの真面目な性格に加えて、自分の枕じゃなくちゃ眠れないくらい神経質なところがあったのが、レオじいちゃんロス(だと思う、たぶん)で一気に困った方向に曲がってしまいました。

じいちゃんが亡くなって、食事はほとんどコンビニ弁当。ナナコカードを使いまくってました。

そんなばあちゃんなので、自分からミョウガを採ってきて、まだ青いトマトと一緒に塩漬けにするなんて、すごい出来事です。もしかしたら、ここのところ毎日届けているらんどく弁当に辟易したのかもしれないけど。今は歩けないのでコンビニには行けない、ことになっています。(こっそり行っているらしい)

そもそもミョウガってどんな風に生えているんでしょう。

ばあちゃんが踏み荒らした(といっても自分の土地)あたりを見せてもらいました。もう背が高くなっている葉の根元に、小さく頭を出しているのがミョウガですね。なんだかタケノコみたい。土の中にもう少し長く茎のようなものが続いています。そして地面すれすれには白い花が咲いている!!

これ花だったんだ。ばあちゃんが生のミョウガもくれたんだけど、透明なぐにゅぐにゅした物がついていて、何だろうなあと思ってました。この薄い花を洗うと、ぐにゅぐにゅになるってことね。

今夜は採りたて、すんちゃん実家産のミョウガを刻んで、「濃旨」豆腐にのせて食べようかなあ。

すんちゃんの転勤であちこち行きましたが、中にはミョウガや青シソがあまり手に入らない土地もありました。風邪をひいたら梅干し入りのおかゆが食べたくなるように、疲れた時には無性に「古き良き日本の食材」が食べたくなります。人は生まれ育った土地の食べ物に、結局戻っていくのかもしれません。

そんな事を考えるときには、ある歌人のことを思い出します。

独活三葉山葵筍 紫蘇茗荷 想いつつ食む獄食スパゲティ

郷 隼人 「ロンサム隼人」より 2004年 幻冬舎

「うど みつば わさび たけのこ  しそ みょうが」と読みます。朝日新聞の歌壇常連となった彼は、米国の刑務所で服役している囚人です。終身刑。もう日本の土は踏めないのかもしれません。仮釈放の申請が却下されたという歌が何首かありました。

しばらく歌壇への掲載がないと「もしかしたら、刑が執行されてしまったのかも」と心配になる読者は私一人ではありませんでした。今は我が家は新聞を定期購読してませんが、彼の歌はときどき胸をよぎります。たとえ野草のようなちっぽけなものでも、手に入らないとわかっているからこそ、よけいに思いが募るのでしょうね。

※ 毎日の獄中食は脂濃く 梅干し入りのむすび食みたき

※ こんな夜はおでんや湯豆腐うまかろな 雑炊に田舎味噌汁なども

※ 「生きとればいつか逢える」とわが出所 信ずる母が不憫でならぬ

同じく 郷 隼人 「ロンンサム隼人」

獄中での暮らしや望郷の念についての歌が多い中で、梅干しやおでんがでてくる作品は親しみやすく感じられます。けれども、一見ユーモラスながらもせつなくて、どうか健康でいてほしいと思わされます。

『LONESOME 隼人』(郷 隼人 幻冬舎)は歌文集で、エッセイも掲載されています。刑務所のなかでグッピーを飼ったり、プラスチック製のバケツでほかほかの銀シャリを炊いたりと、悲しくて辛いだけじゃなく、よりよく生活するために工夫して暮らしているのがわかります。サラダについてきたトマトの種を育てて(肥料は乾いた野鳩の糞)立派なトマトを何十個も収穫した件には、感心しかできません。

コメント

  1. すとらと より:

    ずらりと並んだミョウガの行列…おいしそうです(ゴクリ)
    薄色のお花もひっそりしていてかわいらしいですね。
    そういえばミョウガは染色体が変わっていて、お花から種ができることは滅多にないと聞いたことがあります。保険のようなものだとか。生命の神秘も多種多様なのですね。
    シエおばあ様は、ランドクさんのお弁当に舌鼓の毎日だと思いますよ(*^-^*)

  2. ミョウガの花は種が出来づらいんですか。
    すとらとさん、教えていただいてありがとうございます。
    「へえー」ですね。これも”徒花”というのでしょうか。

    それにしても「シエおばあ様」だなんて、まあそんな、おほほほほでございますわ(#^.^#)
    こんどおばあ様と呼んでみようかな。