世界で一冊の本展@函館

あれこれ

(まちセンのロビーでもらったチラシと、試供品。集めた不要ロウソクを溶かしておがくずと混ぜ、薪ストーブ用の着火剤を作っているそうです)

函館の十字街にある地域交流まちづくりセンター(まちセン)へ行ってきました。『第16回 世界に一冊だけの本展』を見るためです。この「まちセン」はもともとは丸井今井デパートとして昭和44(1969年)まで営業していたところです。大正12年(1923年)に建てられたあと改修されたり、大火に巻き込まれたりして、昭和9年(1934年)に今の姿になりました。実家の母が昭和10年生まれなので、それよりもまだ年上です。

建物の中には「東北以北 最古のエレベーター」が残っています。ただの最古ではなくて、「最古の手動」のエレベーターだそうです。エレベーターを待っているとき、今何階にいるかわかるようにドアの上に電灯(うーん、何ていうのかわかんない)が点きますね。このエレベーターのは、電灯ではなくて秤のような目もり式です。

さすがのレトロ感ですね。エレベーターを待っているとき、この表示でどの階にいるのかわかる仕組みです。今は1階にいるようです😊

最新式の普通のエレベーターももちろんあって、階段を上がらないお客さんはそちらに乗ります。この手動エレベーターは学校行事で子供たちが見学に来たら、乗せてもらえるそうです。すんちゃんは子供のころ、このデパートに来た記憶があると言っていました。

上へ続く階段。古いけれど趣があります。蹴上(けあげ)というのか、一段一段があまり高くないので、小さい子どもでも上りやすいでしょう。幅が広いので、5人くらいは並べるかもしれません、迷惑でしょうけど。

こういう昔の建物がまだ使われているのが、函館の西部地区の良いところでしょうね。歴史も風情もたっぷりで、見慣れていてもときどき見惚れてしまいます。

さてお目当ての「世界に一冊の本展」は2階です。やっとたどりつきました。(実はこの展覧会は会場が途中で替わるものでした。知らずに五稜郭の会場へ行ってしまったのです。)今回で16回目のこの展覧会ですが、一般の方が自分で製本もして作った・創った本を出品するものです。

始まったころは、紙以外の素材を使ったり、開き方や見え方に工夫したりと、本そのものを創る試みが印象的でした。今回は本の中身で勝負というか、内容を創作しているものが多かったです。綴じるところは紙紐をつかう「和綴じ」や、カード型の本を皮紐で結わえているもの、リングでまとめているものがありました。

今回いちばん目立っていた木製の本。カボチャやバナナばかりじゃなくて、何気なくこぼれているカボチャの種も小さな本でした。こういうのも楽しいです。

会場を間違えてしまいましたが、そのおかげで素敵な出会いがありました。五稜郭の会場は「シエスタ ハコダテ」。モダンなショッピングモールです。1~3階は無印良品がメインなのですが、とても面白い売り方というか展示をしています。たとえば子供服売り場には「子供が好きな絵本」や「お祝いにどうぞ」など、自分のところの商品(この場合子供服)とよくマッチする「本」が置かれています。

食器のコーナーには洋食器の歴史といったものや、おしゃれなレシピ本。家具のコーナーには新しい暮らし方の提案本など、元の商品とよくマッチして、相乗効果でよりよく見せる本をならべています。どれも興味を引く内容です。きっと良い本のコーディネーターさんがついているのでしょう。

エスカレーター横の小さいコーナーにも本が置いてあります。自然科学やエコロジーなどに関する数十冊の本の中に、これは買っておうちに連れて帰りたいという本が私を見上げていました。

MUJIBOOKSと銘打った小さな一角。

『生物と無生物の間』を書いた福岡伸一さんの新刊『ツチハンミョウのギャンブル』です。週刊文春に連載していたコラムをまとめた本です。もとの連載は『福岡ハカセのパンダレイ/パングロス』。自分を「ハカセ」と呼ぶ人間は本当は胡散臭いのですが、題名は週刊誌側が名付けたに違いありません。なので気にせず行きましょう。

4000匹のうち生き残れるのは1匹か2匹。ツチハンミョウという地味な虫は壮絶なギャンブル人生を生きている。それに比べたら、私たち人間なんて–という昆虫バナシが本書のタイトルとなった「ツチハンミョウのギャンブル」をはじめとする、福岡ハカセのワンダーランドというべき一冊。

「ツチハンミョウのギャンブル」裏表紙より

コラムをまとめたものなので、一話一話が短いです。短くて良かった。語り口は柔らかいものの、内容はがっつり理系。繰り返し読んでようやく理解できるものが多く、正直なところとても苦労しています。でもその苦労がぜんぜんいやじゃないんです。もっと数学や理科が得意な人が読むんだったら、もちろん興味深いんでしょう。でも数学オンチの私が食いつけるぎりぎりの難しさが絶妙です。

4000分の1の確率で生き残るハンミョウに必要なものは何でしょう。やっぱり運でしょうか。とか、そんなことをつらつら考えながら眠るのも楽しいです。

コメント

  1. 火星ぱんだ より:

    函館では面白い企画がたくさんありますね。見てまわるだけでもとても楽しそうです。写真にある『カボチャ』や『バナナ』や『カボチャの種』の本の実物を見たら、じんわりと感動しちゃいそうです。

  2. 火星パンダさん、いつもありがとうございます。
    かぼちゃの種型の本は、なんと大きさが2センチくらいなもんでした。残念なことに種にも、カボチャやバナナにも、なんにも書いていませんでした。