いわゆるマジックハンドです。子ども用のおもちゃだけど、可愛いだけじゃないスグレモノです。入院中はこれ無しでは、いられなかったほどです。なんと病院の売店で売ってまして、入院患者さんはかなりの率で購入していました。
ひと月ほどの入院生活になるといわれてました。それで不足な物がないように、充分な用意をしたつもりでした。着替、オヤツ、それに十分過ぎる読み物。東京の次男ピカは漫画と小説がたくさん入った「電子書籍リーダー用端末」を貸してくれました。(これで”鬼滅の刃”を完読した) 時間はたっぷりあるし仕事はないし、「読むぞー💛」
そう、結構楽しみにしてたんです、この入院。
私と同じ時期に実家の母も、高齢者向けの病院に入院が決まっていました。それまでは家から日中過ごす施設まで、徒歩で通っていたのです。そのふた月まえほどから急激に筋力が落ちて、車いすでの移動になりました。同時に食事がうまく呑み込めなくなって(いわゆる嚥下障害です)どんどん痩せていきました。
通いの施設からは「もうここじゃ面倒見られない」と言われるし、私は足が痛くて歩けないし、この辺が体力的にいちばんきつい時期でした。
高齢者専門の病院に電話で窮状を訴えて、母を入院させてもらうことになりましたが、こういう病院は普通は順番待ちのようです。よっぽど私の声が切羽詰まっていたのでしょう。でも本当に助かりました。
私の腰は『腰部脊柱管狭窄症』でした。「何か腰に無理する事あったかい?」と病院で聞かれましたが、あったなんてもんじゃありません。人間の身体の重いことといったら、もう想像以上でした。
床に座り込んだ、くったりした重い「物体=母」を持ち上げて、ソファまで戻すだけで何分かかったことでしょう。ソファに座っていたはずなのに、いつの間にか床に滑っているのです。一度床に降りてしまうと、立つこともトイレに行くこともベッドにいくこともできません。特に本人は困っておらず、動こうとする気持ちがないので大変でした。
2か月ほどのそんな悪戦苦闘の末、めでたく二人とも入院できました。私には入院は「奮闘後のご褒美」だったのです。脊髄造影剤を入れての検査も(ものすごく痛いと聞いた)、背骨に金属を取り付ける手術も(これもものすごくものすごく痛いと聞いた)、リハビリも(人によっては痛いと聞いた)も怖くありません。どんとこい、手術! さあこい、楽しい入院生活!!
結果的に、どれも殆ど痛くありませんでした。拍子抜けするくらいです。造影剤をいれて行う検査なんかは、「さあくるぞくるぞ」と身構えていると「はい終わりました」でした。身構え損です。
手術後の混沌時期を過ぎると、もう看護師さんはあまりかまってくれません。渡された「これはしちゃだめよ」的なプリントによると、基本的に腰は動かさないこと、特に前かがみは厳禁のようです。動かしたくてもガッチリとしたオーダーメイドのコルセットを着けていたので、動かせなかったんですけど。
イラストで「してはいけない座り方」が描かれていました。横座り、体育座り、胡坐(あぐら)はもちろんのこと、足を前に投げ出して座ることも、なんと正座まで禁止でした。
じゃあ、どうやって座ればいいんでしょう。そう看護師さんに聞いたら「ベッドのうえでして良いのは、ベッドの縁から脚を垂らして座る方法だけです」 ふーむ。
前かがみをしてはいけないと言われても、日常生活で前にかがむ動作がいかに多いことか。靴下をはく、から始まって床に置いてある荷物を拾うことも、髪を洗うことも難しくなりました。
そこでマジックハンドの登場です。可愛くみえてもパワフルで、けっこう重いものも動かせます。特に重宝したのが洗濯機から洗い物を取り出すとき。
洗濯が終わると、乾燥機に衣類を移さなきゃなりません。けっこう深い洗濯槽に屈むことは無理でしたが、マジックハンドさんがかわりにやってくれました。掴む力が強いので水を吸った洗濯物も何のそのです。
さすがにこの事態は予測できなくて、入院後に同階の人たちが使っているのをみて、売店で買いました。今までの人生で「買って良かったーと思ったものベスト5」に入るかもしれません。
じつはお値段が割と高いので、退院の時も後輩(?)に譲らすに、持ち帰りました。意外にも靴下を履かせるのが上手で、すこし丸めた靴下を椅子の上などに置いて、何とか足先だけ入れるとあとはマジックハンドで掴んで引っ張り上げることができます。
マジックハンドが手元に無いときは、床にあるものを拾うのに、もっぱら足の指を使っていました。家の中では裸足だったので、足指でひょいっと掴んで上へポイっと投げ上げる。それをキャッチしては「私ってばコナンみたいじゃないの」と悦に入っていました。コナンはもちろん『未来少年コナン』のことです。足の指の力だけで、飛んでいる飛行機の翼につかまったりします(;^ω^)
さて、最近買って良かったーと思ったもの、残りの4つは
①「肩から斜め掛けできる民芸調布製バッグ」(ドラッグストアのワゴンセールで1000円。これひとつで手ぶらで買い物に行きます。両手が使えてらくちん。)
②「立ったまま使える木製の靴ベラ」(木製スタンドつき。4000円くらい。まさに今回の私の状況を予測していたかのようです。)
③おとついダイソーで購入した「写真などを挟めるマウスパッド」(手近かにあった”東京ばなな”の包装紙を入れてみました。かわいいです)この包装紙にはなんと2006年の賞味期限シールが貼ってありました。もう15年近くも前にお土産でいただいて、そのあと文庫本カバーとして使っていたものです。
ベスト5の残りのひとつは、思いつきません。まだまだゆっくり考えるということにしましょう。この中途半端な時間もいいもんですよね。
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