ばあちゃん、デイサービス体験へ行く

「老い」に向き合う
柴犬じゃなくて違う犬種にみえるね

(今日の写真。カセンがほっかむりをして、雪の日のお散歩へ出発。これで少しは暖かいかな。)

すんちゃんの母さん、らんどくのお姑さんであるシエばあちゃんはこの度めでたく(?)要介護認定を受けました。

前回の認定から3年近く経って、その間更新もせず、さすがにこれは「要支援」ではないだろと、家族もかかりつけ医の眼鏡先生も感じる事が増えてきたのです。

物忘れのように、ばあちゃん自身が「あれ、おかしいな」と思える症状だけではありません。いろいろな物事の管理が出来なくなって、そして本人がそれに気づいていない。お金の管理、薬の管理、食材や冷蔵庫の管理。 保険証や診察券の在処がわからなくなるのはしょっちゅうでした。

特に深刻だったのがお金の管理で、詳しくは書きませんが、親族一同が「ええーっ!」と大声をあげたくなるほどの事をやらかしてます。犯罪には絡んでないので、その辺はご心配なく。ただ、金融機関ももう少し考えろよ、と乱暴な口調になってしまうほど私達は動揺致しました。この辺から、これはマズイんじゃないだろかとの認識が、ばあちゃん業界に広がりました。

そして成年後見人制度で任命?指名?されているすんちゃんが、いろんな管理にダイカツヤクすることとなりました、はい。

シエばあちゃんは、なんだか変だなあとは感じているのでしょう。そしてハッキリしない自分自身に困っているように見えます。時々独り言にしては大きすぎる声で言ってます。「ばあちゃんはどこも悪くないのに、どうして毎度病院へ行かなきゃならないんでしょー、ね?」

最後の「ね?」はカセンに同意を求めている体です。こういう時だけ、カセンも律義にばあちゃんを見ています。

だって病院に行かないと、ばあちゃんの大事な『みんざい』が貰えないんだよ。そういうと、そりゃ困るね、と納得します。一応は。『みんざい』は睡眠導入剤の事で、寝付きが悪いばあちゃんの必需品です。若い頃からお世話になってます。昔はあちこちの病院で処方してくれたけど、この頃は「ウチでは出せません」と言われるそうです。(ばあちゃん談なので真偽はわかりません)

雪の中のずーしーほっきー

認知症になったからといって、何でもかんでも分からなくなるわけじゃないし、自分が分からない事にものすごく不安を感じています。そして物忘れはしても、プライドは残っています。

実家の母がまだ一人で歩けた頃の事を思い出します。デイサービスからの帰り道に、公園のベンチに座ってこう言いました。「らんどくちゃん、お母さんはもうダメだわ。何にも分からなくなった。このままここで死にたい」

実はこの日、デイサービスで職員さんに暴言を吐き、何と玄関にあった靴ベラで殴りかかったそうです。職場に連絡が来て、早退して迎えに行きました。仕事場から施設まで5分、施設から実家まで5分。走って迎えに行くと、母は施設の玄関で泣いていました。

公園まで手を繋いで歩きました。このころはもう、私の事を娘だとは分からない事もあったけど、この日は娘でした。

自分が自分じゃなくなる不安。論理立った事は言えないけど、途轍もない悲しみを感じていたのでしょうか。それでも認知症患者の有り難さで、あっという間に忘れます。暑い夏の日だったので、家に帰って一緒にアイスを食べました。

冬の日の青空は一層キレイです

さてシエばあちゃんの方は、長く長く続いた「何にもしない毎日」から一歩踏み出しました。デイサービスの体験会へ出かけたのです。これは行政の高齢者施策の素晴らしいところで、ひとつが始まると、どんどん次に次にと進みます。

実はばあちゃんはデイサービスの体験に行きたいわけじゃありません。何もかも面倒なので、家でウトウトしていたいのです。でも日頃から世話になってる優しい嫁が(これ、らんどくの事です)勧めてくれるのです。無下には断れません。

体験の日程が決まっても「本当は行きたくなーい」「ばあちゃんは面倒くさーい」とカセンに向かって言ってました。隣でニコニコしているこの嫁は、時々変に押しが強いので、そんなパフォーマンスをしても「じゃあ行くのやめましょうか?」なんて言ってくれません。

らんどくちゃんは、心配してくれてるんだよね?そう言って、シエばあちゃんはチラリと私を見ました。多分その後は「でも大丈夫だよ、デイサービスなんか行かなくても」と続けるつもりだったのでしょう。

私はシエばあちゃんの真似をしました。いつも一人掛けの長椅子に寝ころんで、半分ずり落ちて、足をテーブルの上に載せています。(まったくお行儀が悪いったら!)そして大きく伸びをして声色も使ってみました。「あーあ、退屈だなあ、このままだとボケちゃうなあ」

あーら、ビックリするほど、ばあちゃんにそっくり。思いあたる節のある本人も、照れくさそうにニヤッと笑いました。

シエばあちゃん、いつもこんな風に言ってるもんね。もしかしたらものすごーく楽しいかも知れないよ、一度行ってみようね。そうだ、明日の病院の帰りに、デイサービスで使うものを買いに行こうか。

そんな感じでイオンに一緒に行きましたよ。ピンクの線が入ってる白い上靴を買って、少し前向きになりました。その上靴にも、新品の歯ブラシと赤いカップにも『シエ』と名前を書きました。準備万端です。そうして、お迎えに来た車に乗り込みました。

(これです。看護師さん用のスリッポン。履きやすそうです)

いってらっしゃーい。どんな顔して帰ってくるのか、楽しみです。たぶん「もう行かない」とか言うんだろうなあ。でも文句言いながらも、また来週も行くんだろうなあ。すんちゃんも同じ意見です。「もう行かない!」に一票!

息子も嫁も良くわかっておるのだよ、ばあちゃん。行きたくない時は行かなくてもいいからね。うーん、ポヨを幼稚園に送り出した時以来のドキドキ感です。

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コメント

  1. すとらと より:

    いつもお疲れ様です。
    その後シエおばあさまはデイサービス気に入られましたか?
    らんどくさんがおばあさまの真似をしたところ、機転が利いていて、本当はすごく大変なんだろうけど思わずほのぼの。いつか『らんどくの知恵袋』という本が本屋さんにずらりと並んでいて、たくさんの人が手に取るところを想像してしまいました。