コスモスが咲く季節になりましたね。これはすんちゃんの実家のコスモスです。道路沿いに咲いているので、遠くからでもよく見えます。
すんちゃんのおばあちゃん、つまりシエばあちゃんのお母さん「ミサヲおばあちゃん」が数か月この家で暮らしていた時、しらないうちにお散歩にでかけてしまう事が何度かありました。
この小さな町はミサオおばあちゃんの生まれ育った場所です。それでも認知症を発症しているので、心配したシエばあちゃんが捜しに出ると、のんびりと戻って来るのだそうです。そして「コスモスが咲いている家だから、すぐわかるよ。大丈夫」と言うんだそうです。
自分の育った生家には(歩いて行ける場所なのに)行けなくても、その辺をぶらーっと歩いて、コスモスをめじるしに帰宅するなんて、ちょっといいですよね。ヘンゼルとグレーテルが森の中でパンや白い小石をめじるしにしたみたいです。
庭にコスモスが咲いている家はほかにもあったはず。それでもちょっとした道のカーブ具合や、周りの家の感じなんかを、映像としてまるごと覚えていたのかもしれません。
自分の好きな物に関しては、細かいところまでよく見えたり覚えられたりするものです。ミサヲおばあちゃんは花が好きな人だったので、とりわけコスモスを覚えられたんでしょう。
好きな物は覚えられるという実例をひとつ。
知り合いにスィーツがものすごく好きな人がいます。学生時代に一緒に大阪へ行ったときのことです。同じSFサークルに入っていたのですが、大阪でのSF大会にそれぞれ行くことがわかって、道中を一緒にしたのです。同じサークルとは言っても、まだ知り合ったばかりの人で(たぶんお互いに)不安もありました。
ところが彼女の思わぬ才能で、旅は楽しいものになったのです。でこぼこコンビの珍道中だったので、大都会大阪の梅田の地下街でさっそく迷ってしまいました。何度も似たような通りをぐるぐる歩きました。
ちょうどその直前に『梅田地下オデッセイ』(堀 晃/作 1981.2 ハヤカワ文庫)が発売されていて、「これがリアル梅田地下ラビリンス」などと、面白がってるうちはよかったのですが、さすがに疲れてきたころ、彼女が言いました。「ちょっと待った。ここ通るの三回目」
え、どうしてわかるの?
医学生だった彼女は、銀縁メガネの奥の賢そうな瞳でじっと喫茶店の食品サンプルを見ていました。「このパフェ、さっきも見た」「ほら、生クリームの盛り加減が同じ」「付け合わせがメロンとミカンとパイナップル」
で、でもパフェなんてそんなに違いがないんじゃ?「器が特徴的でしょ、ちょっと下が膨らんでいて」そんなもんでしょうか。すみません、私にはわかりません。
そうして次々と店を指さす彼女に導かれるまま、あっちの食品サンプル、こっちのパフェ見本と道を辿りました。「これはちょっと変わり種。ポッキーの代わりに○○が刺してある」「色違いがみっつ並べてあるでしょ。選択肢が多くていいよね」
無事に目的地に到着して、彼女への尊敬の念は高まりましたが、彼女は”そんな事、なんてことない”という顔をしていました。そしてSF大会の夜の部では、『スターウォーズ』でルーク・スカイウォーカーが特訓する様子を再現したパフォーマンスで、やんやの喝采を浴びていました。すごかった。(エピソード5「帝国の逆襲」中、ルークが惑星ダゴバで片手逆立ちする修行場面。パフォーマンスは、周りの人たちが逆立ちにあわせて座布団を持ち上げ、ルーク役が力尽きるときに同じタイミングで座布団を墜落させました!(^^)!)
初めて参加したSF大会だったので、そのすべてが楽しかったです。大会そのものも、宿泊するホテルに引き上げてからの分科会も、忘れられません。土地柄なのでしょう、「河内音頭を勝手に歌う会」みたいなものがあって、各部屋の分科会に踊りながら入ってきたりしてました。私は「アニメソングを夜徹し歌う会」で片手を突き上げて、グレートマジンガーなんかを歌いました😊
有名な作家の方々も、参加者に交じって楽しんでおられました。(何回目の大会だったか、分科会巡りをしながら酔っぱらって座り込んでしまった星新一先生にサインをいただきました。ホシヅルのイラストと”楽しいね”という言葉が書いてあります)
閑話休題。
ところで、道に迷ったときに役立つ技が私にあるかといえば、大きく首を横に振るしかありません。なにせ得意技が「迷子」ですから。
特に大人になってからは、自ら望んで迷子になっている感じすらあります。道を間違えて、迷って、新しい道を見つけているんです。ここはこの道に繋がってたんだ!!ってことはしょっちゅうです。
実家で暮らしていた間、趣味は「公共交通機関の路線図を読むこと」でした。バス・地下鉄・路面電車を乗り継ぐと、どこでも不自由なく出かけられたのです。新しい場所に出かけては、車窓から感じのいいお店を探すのが楽しみでした。
自宅にもどってからはもっぱら車移動ですが、市街地図はレトロな紙タイプを使っています。大きな地図で全体の様子を確認して、地図を折りたたんで実際に行く場所だけをわかりやすくしておきます。知っているお店や場所を頭の中で順番につないでいきます。
今までに行ったことのある場所が私の道しるべ。そう思うと、迷ってもむしろ喜んじゃう「ヘンなおばさん」のできあがりです。
ヘンルーダに産卵にきたナミアゲハ。いもむしさんと対話中の私なんか気にせずに至近距離で職務にいそしんでました。アゲハにはそれぞれお気に入りの『蝶の道』があるそうです。
コメント
コスモスの道しるべ。スイーツの道しるべ。どちらも素敵なお話ですね。
つんどくらんどくさんの学生時代の思い出からは、わくわく感が伝わってきました。
ところで、迷子にかけては私もちょっとした自信(?)があるのですが、子供の頃は「昼間どんなに迷子になっても、夜になれば北極星が出るから大丈夫なんだ」という安心感を持っていました。夜外を歩ける年頃になって、北極星を見上げながら「だから、何なんだー!」となんの解決にもなっていないことに気づいたときは愕然としたものです(笑)
つんどくらんどくさんの「迷子」は、道しるべを開拓する『冒険者』のようですね。
ナツメグさん、こんにちは。
「だから、何なんだー!」はおもしろいです!!
私は就職したあと、帰宅するバスを待っているときに、ふと見上げた空に”オリオン”を見つけて泣いてしまったことがあります。
社会人になって不安でしたが、どこにいても同じ星空が広がっているんだと感じたんですね。いやー若かったなあ。